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松山地方裁判所 昭和41年(行ウ)1号 判決

原告 紙パ労連丸住製紙労働組合

被告 愛媛県地方労働委員会

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(当事者の求める裁判)

一、原告

「被告が、愛媛県地方労働委員会昭和四〇年(不)第六号不当労働行為申立事件について、昭和四〇年一二月二四日付でなした原告の申立を棄却する旨の命令はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決。

二、被告

主文同旨の判決。

(原告の請求原因)

第一、一、原告組合は昭和四〇年五月訴外丸住製紙株式会社(以下単に会社という)と昭和四〇年度賃上げについて協定(以下本件協定という)したが、それには次のような条項が含まれている。

(1)  従来の組合別源資制を改め、全従業員につき源資一本制を採用する。

(2)  賃上額を本工男女月額金三、二〇〇円(一日金一二六円)、但し配分は一律部分五〇%、賃金スライド部分二五%、査定部分二五%とする。

二、会社は同月一五日右査定部分を操作し、原告組合員については丸住製紙新労働組合員(以下第二組合員という)あるいは非組合員と不当に差別して査定点を低く評価し(平均点四点以上の査定点をとつた者は原告組合員については組合員総数六三名中二九名であつたのに対し、第二組合員については組合員総数三九九名中二八七名、非組合員については総数一〇九名中六九名もあつた)、賃上額を平均日額金一二〇円として支給した。

第二、一、よつて、原告組合は会社の右賃上額についての差別扱いは、本件協定に違反し、且つ、原告組合員が原告組合に加入しているということで不利益な取扱いをした(労働組合法第七条第一号)ものであるとして、同年六月二四日会社を相手として被告に対し左の救済申立をした(愛媛労委昭和四〇年(不)第六号事件、以下本件事件という)。

(1)  会社は本件協定に従つて、原告組合の組合員につき昭和四〇年度の賃上額を一人平均日額一二六円に引上げること。

(2)  会社は、同一条件にある原告組合の組合員と第二組合の組合員および非組合員についての過去四年間の賃上額明細を原告組合役員に公開せよ。又、組合員間の不当な差別をやめ、適正な配分をせよ。

二、しかるに被告は昭和四〇年一二月二四日原告の申立を棄却する旨の命令をし、右命令は昭和四一年一月一一日原告組合に交付された。

第三、しかし右命令は左記のとおりその事実認定に誤りがあり、且つ不当労働行為の立証責任の法則を誤つているから違法であり取消を免れない。

一、事実誤認について

(1) 右命令は、前記のとおり原告組合の組合員への平均支給額が協定より日額にして五円余り低かつたことを認め、その原因は原告組合員の平均査定点が全従業員の平均査定点より〇・七七低いため生じたものであることは明らかであるとしながら、その査定が不当労働行為になるかという点については、「その差が〇・七七にしか過ぎず、加えて第一組合の中にも平均点以上の者が半数近くおり、他方第二組合、非組合員の中にも平均点以下の者が多数存在する事情のもとでは、第一組合員なるが故に受けた不利益であると判断するのは困難と言わなければならない。」としている(命令第二項(3))。

被告は右結論を会社が提出した「昭和四〇年(春)賃上げ参考資料」(乙第一八号証の三八。本件協定に基づいて昭和四〇年五月支給された賃金の算定資料。)および「昭和四〇年一時金参考資料」(同号証の四二。昭和四〇年七月三日の協定に基づいて支給された一時金の算定資料。)に基づいて導き出しているので、原告は右の資料について反論する。

(イ) まず、成績査定対象人数と組合別支給人数との違いを検討すると、

表〈省略〉

ここから(A)が従業員数、(B)はその内本工労働者数、(A)―(B)は臨時工および試傭工数と考えられる。

(ロ) 右によつて得られる結論は、成績査定および出勤率について、本工、臨時工を同一基準で算出していることである。

前記各協定の趣旨(これは従来からの労使慣行によるものであるが)から云えば、一律部分、スライド部分、出勤部分について、それぞれの部分で臨時工に対しては本工の七〇%の金額が支払われるのが妥当であるから、同一基準で算出していることは、右の協定の趣旨に反するものである。

(ハ) 何故右のように本工と臨時工、試傭工が同一基準で算出されたかを考えると会社の不当労働行為の意図が働いていることが明らかである。

すなわち、原告組合員中には臨時工、試傭工は一名も含まれていないのみならず、昭和三六年四月以後に入社した者がいないのであるから、原告組合員が勤続年数も長く経験も豊富で従つて一般に優秀であると考えるのが妥当であり、被告のいうように、臨時工、試傭工も含めた査定点中、平均点の上の者も下の者もいるから不当差別があつたか否かは判断できないというようなものでないことは明白である。

会社の意図は、原告組合員の査定を不当に低く評価しておきながら、査定対象に臨時工、試傭工を加えることにより、全体の平均より上の者もいれば下の者もいるというように見せかけたものである。

(ニ) 要するに、被告の判断は原告組合、第二組合、非組合のグループを構成する内容については全く立入らず、会社の提出した証拠の表面的な判断によつてのみ行われたもので科学的判断とはいえないものである。

(2) 本件事件において被告は、原告組合が原告組合員、第二組合員の同一条件者を摘出し、過去四年間の賃金上昇率もしくは現在の賃金額(基本日給)を比較検討すれば会社の不当な差別が一目瞭然となることを主張したのに対し何らこの点について調査をしていない。これは経営者の不当な弾圧から労働者を保護する立場にある被告がその使命遂行のために与えられている労働組合法第二二条の強制権を放棄し、会社の不当な差別待遇の中で精神的、肉体的、経済的な圧迫から原告組合員を救済する誠意に欠けていることを示すものである。

二、立証責任の原則の誤りについて

(1) 右命令は、前記のとおり原告組合の組合員の平均査定点が全従業員の平均査定点より〇・七七低い事実を認定しており、また原告組合の組合員に対する会社の差別扱いの事実についての主張立証が存するに拘らず、「会社の個々の査定の当否を論ずる資料もない。」として査定点の差を不当労働行為と認定することは困難であるとした(命令第二項(3))。これは左記理由により明らかに立証責任の法則についての判断を誤つたものと云わざるを得ない。

(イ) 元来、不当労働行為事件における立証責任の分配からすれば、労働組合の側においては、労働組合の活動と不利益な取扱いの事実のみを立証すれば足り、使用者側において、右不利益取扱いが合理的かつ正当である事実を立証しない限り不当労働行為と認定すべきである。

(ロ) 従つて本件事件の場合においても、「会社の個々の査定の当否を論ずる資料」がない以上、査定点及び支給額につき現実に原告組合の組合員が低いことは明白であり、且つ従来の原告組合の組合活動およびこれに対する会社の反組合的態度も充分に主張立証されているのであるから、会社において差別についての合理的根拠、その正当性の立証がないものとして不当労働行為の成立を認めるべきである。

(被告の答弁)

一、請求原因第一項一を認める。同項二のうち原告組合主張の日時に会社が原告組合に対し平均日額一二〇円の賃上額を支給したことを認めるがその余は争う。

二、同第二項一、二は認める。

三、同第三項一、二を争う。

(被告の主張)

一、原告の事実誤認の主張に対し本件協定は忠実に守られていたことを述べる。

(1)  原告組合は源資一本制による昇給実施の結果、原告組合員の平均の賃上げ額が協定金額(日額一二六円)より五円余低かつたことを協定不履行だと主張するようである。

しかし、これは源資一本制に基づく結果であつて、源資一本制が全従業員を対象とし、協定額は全従業員に与えられる平均額であるとする協定に基づく配分であるならば、全従業員への支給額平均が協定金額と異なる場合に初めて協定不履行の問題が起こるのであつて、全従業員のなかの一部の従業員からなるグループを捉えて、そのグループの平均が全従業員の平均より低いからといつて協定不履行を云々することは失当である。

原告組合自身会社と交渉のうえ源資一本制により配分を行うことを認め、妥結金額は全従業員に保証される平均金額であるという協定を締結したのであるから、たまたま原告組合に現実に配分された平均額が低くなつても全従業員の平均に異なるところがない以上、協定違反を主張することは許されない。

(2)  以上の観点にたつて、被告は、この五円余の差額が生じた根拠を焦点に判断を行つたものである。源資の配分率は本件協定によると「一律部分五〇%、賃金スライド部分二五%、査定部分二五%」であつた。右によつて従来の組合別源資制の配分と異なる結果ができたのは、賃金スライド部分、査定部分の双方から生ずるものであるが、賃金スライドによる配分の結果は科学的なものであり会社が作意を加える余地はない。ただ査定部分については会社に作意の余地があるが、異なつた時点における全従業員の成績を査定した乙第一八号証の三七ないし四三などを比較検討した結果と弁論の全趣旨に照らしてみれば、昭和四〇年度(春)賃上げ時における査定では、平均査定点(全従業員平均査定点は四・四四点であつた)以上のものが原告組合員では六三名中一八名(二九%)、第二組合員では三九九名中二二六名(五七%)、非組合員では一〇九名中五〇名(四六%)となつている(乙第一八号証の三八参照)が、昭和四〇年度夏期一時金支給時における勤務査定点では、平均査定点(全従業員平均査定点は四・四一九点である)以上のものが、原告組合員では六一名中二三名(三五%)、第二組合員では四三〇名中二六九名(六二%)、非組合員では一三五名中五八名(四三%)となつており(乙第一八号証の四二参照)、この両者はともに労使の協定に基づき実施されたもので、しかも異なる時点のものであるが、両者を対比するに多少の増減はあるも、会社が原告組合員であるが故に特に低く査定したとは認められなかつた。のみならず、原告組合は前記昭和四〇年度夏期一時金支給時における査定が不当だとの申立もしていない。

また、成績査定および出勤率につき、本工と臨時工を同一基準で算定しても、源資の配分において臨時工が本工の七〇%という協定があるから何ら矛盾はない。

(3)  なお、原告組合員、第二組合員の同一条件者を摘出することは困難である。単に賃金額の変動のみを観察したのでは不当労働行為の実体は掴めるものではない。査定として従業員考査表(乙第一八号証の三五)について従業員各個人の査定点を比較検討しても果して会社に差別待遇の意図をもつて採点したかどうかは判断できない。また、かかる考査表を会社が自発的に公表する場合はともかく、被告が強権によつて証拠として提出させることは経営権を冒すものとして慎むべき態度と考えられる。のみならず、原告組合は本件事件の立証段階でこの点の立証をしなかつたものである。

二、原告の立証責任の原則についての主張に対し、被告は右原則を誤つていないことを述べる。

(1)  原告の主張するとおり、現在の不当労働行為制度においては、申立人は「組合員であること、または正当な組合活動をしたこと」と「不利益取扱の事実」を立証すれば足り、あとは挙証責任が使用者側に転嫁され、使用者側において不利益な事実に対する正当な理由を立証できなかつた場合は、不当労働行為の推定を受けるとする立証責任の原則を否定するものではない。

(2)  しかし、本件にあつて、かかる立証責任の法則を誤つているとする原告組合の主張は失当である。

けだし、原告組合は賃上げの差別(不利益な事実)と原告組合員であることを立証したが、会社においてもその差の生じた理由として、賃金ベースの差異からくるスライド分に基づく差および勤務考課の取得平均の差からくる査定部分に基づいて生じた差であると主張し、公正な勤務考課により公正な配分を行つたという正当な理由を立証したのである。

原告組合において、この勤務考課を不当なものとするならば、原告組合が優秀な勤務成績をあげているにも拘らず査定点が低いことを立証しなければならない。これに対して会社は査定が妥当であることを反証するであろう。ここにおいて被告の新たな判断が加えられるのである。本件のように会社において勤務考課は公正であると主張し、全体の平均に対しては原告組合平均が低くなつたが、原告組合員の中にも高い点のものがあり、反面第二組合員、非組合員の中にも低い点の者がいるとする以上、原告組合員なるが故に不当に差別的査定を受けていると判断することは困難である。もしも、原告組合員の中に差別的待遇を受けている者があるとするならば、原告組合においてこのことを主張し立証し救済を求めなければならない。被告が個々の査定の当否を論ずる資料がないと摘示したのは右のような立証がないうえ、職権によつて原告組合員全員の査定が適正であるか否かを調査することは不可能だからである。

以上のように被告は、賃上げ額の差に対しては正当な理由の立証がなされたとして立証責任の原則により不当労働行為の成立を否定したものである。

(証拠)省略

理由

原告組合および訴外会社間に昭和四〇年五月同年度賃上げについて原告主張のような協定が締結された事実、会社が右協定に基づいて同月一五日賃金を支給したが原告組合員に対して支給された平均日額は右協定の賃上げ平均日額一二六円より低い一二〇円であつた事実、原告組合はこれを不当労働行為であるとして同年六月二四日被告愛媛県地方労働委員会に救済申立をした事実、被告は同年一二月二四日右申立を棄却する旨の命令を出した事実は当事者間に争いがない。

(査定の不当について)

被告は右命令中において、原告組合に支給された賃上げ金額の平均が協定の金額より低かつた事実を認め、その原因として原告組合員の平均査定点が全従業員の平均査定点よりも低かつた為であることを認めたが、それが会社の不当労働行為になるかという点については、「その差(原告組合員の平均査定点数と全従業員平均査定点数)が〇・七七にしか過ぎず、加えて第一組合(原告組合)の中にも平均以上の者が半数近くおり、他方第二組合、非組合員の中にも平均点以下の者が多数存在する事情のもとでは、第一組合員なるが故に受けた不利益であると判断するのは困難と言わなければならない。」と判断したが、この点について原告は命令の右理由は各グループ(原告組合、第二組合、非組合)における構成員(本工と試傭工、臨時工)を考慮にいれていないから正確な判断とはいえない旨主張するのでこの点について検討する。

証人篠原宏の証言により真正に成立したと認められる乙第一八号証の三八によれば、昭和四〇年度春の賃上げ時における査定の全従業員の平均点は四・四四点であること、各グループ別の平均点は原告組合三・六七点、第二組合四・六五点、非組合四・一〇点、各グループ別の平均点以上取得者は原告組合員総数六三名中一八名(二九%)、第二組合員総数三九九名中二二六名(五七%)、非組合員総数一〇九名中五〇名(四六%)であること(原告が請求原因第一、二に述べている数字は平均点を四点としているため多少の相異がある)の事実が認められる。これによれば原告組合の査定平均点も平均点以上取得者数も他のグループに比して低い。さらに証人篠原宏の証言および右乙第一八号証の三八によれば査定対象人数と賃上げ支給人数の差は原告主張どおり臨時工もしくは試傭工の人員数であること、したがつて四〇年度春賃上げ時における各グループの臨時工、試傭工数は原告組合〇名、第二組合二二名、非組合一九名であることが認められる。また同証人の証言によれば臨時工、試傭工は査定点において本工より劣る場合が多いことが窺える。したがつて本工のみを対象とするなら、原告の主張するごとく、原告組合の平均査定点および平均点以上取得者の比率は前記の数字より更に低いであろうことが推測される。

しかしながら、協定によれば臨時工、試傭工は本工の賃金の七〇%が支給されることになつているとしても、査定において臨時工、試傭工を含めて全従業員を同一基準で査定することそれ自体は何ら不当ではない。そして証人篠原宏の証言および同人の証言により成立が認められる乙第一八号証の三五(従業員考査表)、成立に争いのない乙第一〇号証(審問調書第五回)によれば、本件会社の査定は、同表に基づいて主任副主任が評価をし、係長が部署別にバランスをとり、課長が課内のバランスをとり、課長らの集まりである賃金審査会が決定し、さらに金生、川之江の両工場長が認可するものであること、および第一段階の評価をする主任副主任には原告組合員も七名いたことが認められるので、このように多くの段階の審査を経ることおよび審査者の一部に原告組合員もいたことを考えると審査者が自己の見解で不当な差別をすることはそれだけ困難であるとみられ、また乙第一〇号証および成立に争いのない乙第一五号証(証人篠原宏の調書)によれば、第二組合には主任副主任の責任者が多かつたことが認められるので、第二組合員の査定点は比較的高くなつたであろうことが推測され、さらに、本件全証拠を検討するも原告組合員と第二組合員もしくは非組合員とにつきその勤務成績を個別的、客観的に比較評価し得る何らの資料もない。

このような事情を考慮すると、前記の如く原告組合員の平均査定点および平均点以上取得者の比率が相対的に低い事実のみをもつてしては、直ちに査定において原告組合員が不当に差別されているものとは認め難い。したがつてこれと同様の結論を出している被告の命令は結論的に正当であるといわざるを得ない。

原告は被告が本件事件において労働組合法第二二条の強制権限を用い会社に対し原告組合員と第二組合員とに対する過去四年間の賃金支給状況の資料を提出させることをしなかつたのは不当である旨主張するが、右権限を行使するか否かは被告の専権に委かされており、被告が従業員の秘密保持、昭和三九年度までは組合別源資制により賃金が支払われていた状況、原告側の立証の度合い等諸般の事情を考慮して、右資料を強制権限をもつて提出させる必要は未だ認めるに至らないとしたことは一応首肯できるのであつて、右被告の措置をもつて右命令を違法ならしめるものであるとすることはできない。

(立証責任の誤まりについて)

原告は、原告が「労働組合の活動」と「不利益な取扱いの事実」を立証したから、会社において右不利益取扱いが合理的かつ正当な理由に基づくものであることを立証しなければ不当労働行為の成立を認めねばならないのに、本件事件においてその立証がなされていないにもかかわらず「会社の個々の査定の当否を論ずる資料もない。」として不当労働行為の成立を認めなかつたのは、被告の立証責任に対する考え方の誤まりであると主張する。

しかし、現在の不当労働行為についての立証責任は、労働者側にあり、不当労働行為であることを主張する労働者側において「労働組合員であること」および「不利益取扱いの事実」と「使用者側に不利益取扱いの意図があること」を立証すべきものと解すべく、ただ「使用者側の不利益取扱いの意図」については労働者側はその意図の存在を推測させるような外形的事実を立証すれば、使用者側においてその不利益な取扱いについて正当な理由があることを立証しない限り、その不利益取扱いの意図を推認されるに過ぎないのであつて、使用者側においてその不利益取扱いについて正当な理由があることを一応立証するときは、さらに労働者側においてその理由のないこと又はその理由と矛盾する事実を立証しなければならないのである。

そこで、本件につきこれを考えるに原告が「不利益取扱いの事実」として原告組合員に対する支給賃金の平均が相対的に低かつた事実、および、「使用者側の不利益取扱いの意図」として過去において会社側の原告組合や同組合員に対する反感が存在した事実を立証するのみで「不利益取扱いの事実」即ち査定において不当に差別されている事実については労働委員会においても本件口頭弁論においても前記のとおり充分なる立証をしているものということはできない。したがつて「使用者側の不利益取扱いの意図」の存否に対する判断をまつまでもなく、被告が原告の立証が不十分であるとして不当労働行為の成立を否定したその結論は正当というべく本件命令はこの点についても違法ではない。

(結論)

よつて原告の被告に対する本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 秋山正雄 伊藤滋夫 関野杜滋子)

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